中庭のある痴呆性高齢者のための住居
1963年、東京・町田に開設し増築を重ねてきた病棟の東側に、2ユニットの認知性高齢者グループホーム、介護療養型医療施設の増室、ショートステイ、レストラン等の増築計画。そこに地域とのつながりを持つ中庭をつくることが、この計画の大きな課題であった。また、高齢者の生活の場を広げたいという施主の強い思いが、医療と福祉の接点をつくりだし、レストラン、集会室をもつ、積極的に地域に開く建築を実現した。戦後、従軍看護婦として帰還した四ヶ所ヨシ現会長が1954年に創立した、高齢者のための医療、介護というパイオニアワークを受け継いだ事業である。
約250㎡の中庭を囲んで、2ユニットのグループホームが生活の核を構成する。中庭は外部との緩衝領域をつくりながら、自由に散策し、感覚を刺激する場所である。同時にボランティアの活動等、社会との接点をつくりだす場所でもある。
様々な生活経験を持った高齢者が生活する都市近郊で、個人の生活と共同の生活の緩やかな関係をつくることを考えた。
1ユニット9人の個室は、3室を1組にして、部屋の位置を認識出来るようにゾーンごとに壁の色を珪藻土で塗り分けた。個室、小さな和室、ベンチのコーナー、皆が集まる居間食堂と、多様な場所をつくり、身体や手で触れる内部は、無垢の杉板、珪藻土の土壁、大谷石等、柔らかな、呼吸する調湿性能の高い素材で仕上げている。
掲載誌 「新建築」2002年7月 「ランドスケープデザイン」2002年夏号
「コンフォルト」2004年春号
書 籍 『集まって住む「終の住処」』農文協 2009年
『中庭のあるグループホーム』 萌書房 2010年
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